ココが変わった建築物省エネ法
平成27年7月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が公布されました。なぜ従来からの“省エネ法”の改正ではなく、わざわざこのような新しい法律をつくったのでしょうか。新法制定の背景、さらに、“省エネ法”から“建築物省エネ法”になって何が変わったのかを分かりやすく解説します。
“省エネ法”から“建築物省エネ法”へ
平成27年7月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が公布されました。この法律は、従来の工場等、運輸、住宅・建築物、機械器具等といった産業全般を対象にした“省エネ法”(正式には「エネルギーの使用の合理化に関する法律」)から住宅・建築物の部分が独立し、法律の所管も環境省資源エネルギー庁から国土交通省に移行して制定されたものです。また、これまでの“省エネ法”と区別する意味で“建築物省エネ法”と呼ばれています。では、なぜ従来からの“省エネ法”の改正ではなく、わざわざこのような新しい法律をつくったのでしょうか。
現在、一般に民生部門(業務・家庭部門)として分類される建築物で消費されるエネルギー量が、日本で消費されるエネルギーの約3分の1を占めています。そして他分野に比べてこの分野の増加量が顕著ですので、この分野での省エネルギー化を図ることがとても重要になってきています。そうしたなか、2013年6月の「日本再興戦略」や2014年4月の新しいエネルギー基本計画で、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化することが閣議決定されました。このことは国が、なかなか省エネルギー化が進まない住宅や建築物に対して本腰を入れたことを意味しており、今回の新しい法律は省エネルギー基準の適合義務化をひろげる第1歩なのです。このような背景を十分理解していただいた上で、ここでは“省エネ法”から“建築物省エネ法”になって何が変わったのかを分かりやすく解説します。
規制的措置(省エネ基準の適合義務化と大臣認定制度)
建築物省エネ法は、建築物の規模等に応じた規制的措置と、建築主の自主的な省エネルギー性能の向上を促す誘導措置の2つの側面があります。
そのうちの規制的措置の変更点は以下のとおりです。まず、これまでは300㎡以上の建築物について、新築・増改築時等における省エネルギーの措置の内容を、工事着手の21日前までに所管行政庁へ届け出ること(届出制度)が義務付けられていました。平成29年4月からは特定建築物と呼ばれる2000㎡以上の住宅を除いた建築物は、エネルギー消費性能基準に適合し、また所管行政庁または登録判定機関に適合性判定を受けることが義務付けられました。省エネ性能が基準と比べて著しく不十分な場合には指示や公表、命令を受けるものでしたが、今後は必ず基準に適合することが求められるようになります。すなわち基準への適合を担保するために所管行政庁または登録省エネ判定機関による設計図書や省エネルギー計算内容などのチェック受けて、基準に適合している旨の適合判定通知書が得られなければ建築確認を降ろすこともできなくなるということです。なお、建築確認を行う指定確認検査機関と省エネ基準適合判定を行う登録省エネ判定機関は、同一機関とすることが可能ですので、ワンストップでの審査および判定となります。注意することとして、完了検査時には適合性判定の内容どおりに施工されているかどうかが確認されますので、従来の届出制度と異なり、確認申請段階で省エネ性能に係わる仕様をある程度固めておくことが必要です。
上記の特定建築物以外の300㎡以上の建築物においては、以前と同様に届出義務になります。ただし所管行政庁は基準に対して「著しく不十分な場合は、勧告」まですることができましたが、「基準に適合せず、必要と認める場合、指示・命令」をすることも可能となり、制度としてはより規制の強いものとなりました。修繕模様替え、設備の設置や改修等については、これまで届出が必要でしたが廃止となり、3年に1度の定期報告制度も廃止され、これらについては規制緩和になりました。
そのほか、特殊な構造や設備を用いた建築物が、省エネルギー基準と同等以上の性能を有すると国土交通大臣が認定した場合には、適合判定通知書の交付を受けたものとみなす特例も創設されています。
誘導措置(容積率の特例と省エネ性能の表示制度)
次に誘導措置として、容積率の特例が認められるようになりました。これは先に述べた適合義務となる省エネルギー基準よりさらにハードルの高い「誘導基準」を満たす建築物に対して、インセンティブとして容積を割り増しすることができるようになりました。そしてこの「誘導基準」に適合すると認定(性能向上計画認定)された建築物に関しては、認定を受けた旨の「基準適合認定マーク」の表示が許されます。これらによって建築主が自らより省エネルギー性能の高い建築物を目指すことが期待されています。
もうひとつの誘導措置として表示制度があります。これは、「建築物の販売・賃貸を行う事業者は、その販売又は賃貸を行う建築物について、省エネ性能を表示するように努めなければならない。」と建築物省エネ法に定められました。注意しなくてはならないのが、基準適合義務対象の2000㎡以上の新築非住宅に限定されていません。新築か既存か、規模、省エネ基準への適合有無を問わず、省エネ性能を表示するように努力することが求められます。表示は3つの表示方法のいずれかとなります。1つ目は第三者認証によるBELSによる方法です。以前からBELSによる表示制度はありましたが、平成28年4月からは住宅にも対応した制度に改められました。2つ目は、自己評価をするときに使用する建築研究所のWebプログラムで生成可能な表示方法です。3つ目は先に述べた性能向上計画認定を受けた建築物に許される基準適合認定マークの表示です。このような表示により、一般の消費者が省エネ性能を客観的に比較検討できるようになります。
以上、基準適合義務化と判定制度、特殊な構造・設備の大臣認定制度、容積率の特例、表示制度が、省エネ法から建築物省エネ法になって大きく変わった内容になります。
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