表示制度既存建築物にも省エネ性能が求められる時代
昨今では、若い層を中心に、新築マンションを購入するよりもリノベーションされた中古マンションを新築マンションに比べて安く購入する世帯が増えてきています。また立地や間取りのみならず、建物そのものの性能や品質、今まで行われてきたメンテナンスの状態などを含めて、価値が高く評価されたものはヴィンテージマンションとして高価格で市場に流通しています。マンションだけではなく、既存のオフィスビルをリニューアルして、新たにテナントビルとして貸し出したり、以前はオフィスや倉庫だった建物を増改築して、店舗や宿泊施設などに用途を変更して利用されるケースも大都市を中心に目立つようになってきました。
しかし、そのような状況において、既存住宅、既存建築物については、省エネルギー改修等も行い、適切に設備の維持や更新が行われている建物と、そうでない建物では、省エネ性能も大きく異なりますが、消費者にとってはその違いが分かりづらいというのがこれまでの状況でした。
そのようななか、国は、より省エネ性能の高い建築物が、市場に適切に評価される環境の整備や各種支援策が講じられることなどにより、国全体の建築物の省エネ性能の向上が図られ、環境性能に優れた建築物のストック形成の推進が実現できるよう、建築物省エネ法においても、既存の建物について以下のような措置を盛り込んでいます。
既存建築物への表示制度の適用
国は平成28年4月から施行された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)で、その第7条に「建築物の販売・賃貸を行う事業者は、その販売又は賃貸を行う建築物について、省エネ性能を表示するように努めらければならない。」といった表示制度を定めました。これは、売買や賃貸契約時に宅建業法に基づく重要事項説明が必要となる物件は、基本的にはこの努力義務の対象となります。そして、この努力義務対象は、義務化対象の2000㎡以上の新築非住宅に限定されるものではありません。新築・既存を問わず、住宅・非住宅を問わず、また規模を問わず、さらには省エネルギー基準への適合有無を問わず努力義務対象になります。この表示は、第三者認証マークのひとつとして普及が期待されているBELSが主なものとなりますが、これはフロア単位やテナント、共同住宅の住戸などの部分についても表示が可能です。ですので、先に述べた既存マンションでリノベーションされた住戸や、リニューアルされたオフィスビルの売買、もしくはそのようなオフィスビルのフロアやテナントのリーシング時にも、省エネルギー性能の表示は、購入や賃借予定者の判断材料のひとつとなるのです。
BELS以外の表示制度として、省エネ基準に適合することについて、所管行政庁の認定を受けた場合にその旨を表示できる基準認定適合マーク(eマーク)があります。国は、特に既存建築物についてはそのエネルギー消費性能が千差万別であるため、本表示をすることで当該建築物が基準適合認定建築物であることを賃借人や住宅購入者等が一目で認識できるようにすることを企図しています。また国は、どちらかと言えば、この基準認定適合マークの方が主に既存住宅や建築物で活用され、新築についてはより高い省エネ性能をアピールできるBELSを活用していくといったすみわけを想定している模様です。建築物省エネ法施行の際(平成28年4月1日)に現に存する住宅・建築物については、BEI(設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した数値)の値が1.1でも基準認定適合マークの認定が受けられます。そのため既存の建物においては、使い勝手の良い制度と言えます。ちなみに容積率の特例が適用されるようにするには、適合すべき「誘導基準」のBEIは1.0となります。
建築物省エネ法の既存建築物への遡及
300㎡以上の増改築を行い、増改築後に2000㎡以上なる場合、原則として既存部分も含めて省エネ基準への適合が求められます。ただし、増改築部分の床面積が増改築後の延べ面積の1/2以下の場合や、用途変更については、省エネ基準の適合義務対象から除外されます。
基準適合マークでふれましたが、新法施行時に現に存在する既存の住宅・建築物やそれらに増改築した建物については、BEIの値が1.1以下で良いことになります。そのため、新築に比べれば省エネルギー性能の要求水準は低くなります。とはいうものの、築20年以上の既存建築物のほとんどは、省エネ基準に適合しない状況であり、そのままでは、BEI値が1.1を超えているものが多いと思われます。
もちろん、増改築を行わなければ、既存の住宅・建築物は、省エネ基準の適合が要求されるわけではありませんが、省エネルギー性能表示の努力義務化などにより、省エネ基準に適合していないビル等は、今後の不動産価値において、少なからずマイナス評価を受けることになっていく可能性が高いと予想されますので、既存の住宅や建築物においても、今後、省エネ基準に適合することがますます重要になってくるでしょう。
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